日本の教育危機はなぜ起きたのか? 「教育改革」という名のもとにおざなりにされた学習指導の基本【西岡正樹】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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日本の教育危機はなぜ起きたのか? 「教育改革」という名のもとにおざなりにされた学習指導の基本【西岡正樹】

子どもたちや教師にとって〝面白くて魅力的な教室〟とは何かが分かる

牧場の牛舎でも働く西岡正樹氏

 

◾️「自分のことをきちんと話せない子」が近年増えている!?

 

 自分の言葉で自分の思いを語るということは、自分のことを自分でしようとすれば、必然的な行為だ。昨日もリタイヤして再任用された教師と話しをした。

 「自分のことをきちんと話せない子が、自分たちが現役の頃より増えているように思うんだよね。目の前にやってきてモジモジしているから『どうしたの? どこか痛いの?』と訊くと頷くんだけど、その先が出ないから「頭が痛いのか?」とか聞く羽目になる。その繰り返しだよ」

 「話せない子は昔から一定数いるでしょう?」

 「その割合が増えているんじゃないかな」

 そこで先月、授業を参観させてもらった折、授業者が次のように話してくれたことを思い出した。

 「『実験している間にいろんな現象が起きたでしょう。その現象を観ながら思い、考えたことがあったんじゃないかと思うけど、その自分の思いや考えを話してください』と伝えても話す者がほとんどいないのが、現状です」

 「自分のことを自分でする」=「自治の心」は、受動することが当たり前のような状況の中では育たないのだ。

 自分のことを自分の言葉で語ろうとしない子どもたちは、目の前の出来事が自分事ではないのだろう。いや、自分のことだが、自分事として捉えられていないのかもしれない。何故なら、上記のように自分に何か起きたとしても、身近にいる両親や先生が察して解決してくれることが多いからだ。

 

 1947年に学校教育法が施行され、6・3・3・4制が始まってからこれまで、教育改革という名のもとに、多くの改革が行われてきたのだが、その始まりを紐解いてみると、実に興味深いことが分かった。

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西岡正樹

にしおか まさき

小学校教師

1976年立教大学卒、1977年玉川大学通信教育過程修了。1977年より2001年3月まで24年間、茅ヶ崎市内の小学校に教諭として勤務。退職後、2001年から世界バイク旅を始める。現在まで、世界65カ国約16万km走破。また、2022年3月まで国内滞在時、臨時教員として茅ヶ崎市内公立小学校に勤務する。
「旅を終えるといつも感じることは、自分がいかに逞しくないか、ということ。そして、いかに日常が大切か、ということだ。旅は教師としての自分も成長させていることを、実践を通して感じている」。
著書に『世界は僕の教室』(ノベル倶楽部)がある。

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